2006.01.04 社長コラム
「やりたい仕事って、なんやったっけ?」天井を見上げながら考えた。もはや先生に何を話したかすらも覚えていなかった。あれもやりたい、これもやりたい。この頃の私はホントにまだまだ駆け出しでやりたいことばかりが先走り、腰が据わっていなかった。「明日、来た時に話したるわ」という何のメリットがあるのかという軽いいじめを受けながら、夜、布団の中であれやこれやと考えを巡らせていた。次の日、会社に出勤して「今日、ちょっと早く上がらせて欲しいんですけど」と云うと、至ってクールな装いを醸し出そうと努力している“神の声”ディレクターが「なんでや?」とお聞き下された。「夕べ、専門学校時代の先生から連絡があって、ちょっと学校まできてくれと」「何のようで?」 やはりそうきたか。ここははっきり言っておいた方が吉と踏んだので、「仕事の事で相談したいことがあるそうです」と言い切った。するととたんに“神の声” ディレクターの顔がクールとは間違っても呼べない顔に変貌して「ちょっとそっちの部屋で話ししよか」 あ~あ、やっぱりそうきたか。まぁ仕方ないよな。ウソつく方が後でややこしいことを引き起こしてしまう事があるからなぁと考えたのが運のツキ。別室で素敵なガチンコ対談の運びとなった。「仕事ってナンの仕事やねん」語気が微妙に凄んでる。「いや、それを話したいから来てくれっていわれたんですよ」クールダウンしてもらえる様、スローでピアニッシモに。「ほんまかぁ?」「ほんまですよぉ~」とまぁ終始こんな調子で話をする事で、このヤカラチックなディレクターを更正させる事に成功し、何とかして定時に上がらせて貰える事になった。
「しっかし、なんやったっけなぁ~」専門学校の階段を上りながらまだ考えていた。「先生、お久しぶりです」「おう。待っとったよ。早速やねんけども、自分って、ゲームやりたいって云うてたよな?」あっ!云うてた。云うてました。「某ゲーム会社から求人があったから自分言うといたるわ。」「あっ、ありがとうございます!」
人は自分で頑張っている時ほど旨くいかない事が多かったりする。逆に、旨くいかないだろうなぁと思っている時ほど目に見えない力で旨く作用する時もあったりする。人の世ってそんなもんだな、なんて間違っても田舎の坊主が言うようなさとりの安売りめいた事を云いたくはないが、それでも、そのような事を考えずにはいられない時などがあるから面白い。専門学校なんて出たあとは「なんのことなかったなぁ~」なんてことをずっと思っていたけども、その学校の先生がちゃんと覚えていてくれていて、しかも推薦もしてくれる。もちろんたまたまタイミングが合っただけだろうけども、先生に覚えて貰うためにいろいろと作品を見てもらったり、相談と称して飲みに誘ったりしていたことがこの一事に繋がったとも思いたい。営業マンをしている時も仕事が取れない事があれば、やはり頼りになるのは人の縁だった。そして、その縁を確かなものにするために粘着性の高くて高度なコミュニケーションが必要だったことも事実だった。
デザイナーだから、自分ひとりと向き合う仕事だから・・・確かにそうかもしれない。だけど、私はこのやり方でやっていこう。べたべたでスマートじゃないかもしれないけども、このやり方で1歩1歩進んでいこう、この時、そう心に強く思った。
そして、その後、トントン拍子に話は進み、面接もクリアして、ゲーム会社にアルバイトとして潜り込む事に成功したのだった。
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